臨床心理士のミナコです。ご覧いただきありがとうございます。
今回は、パニック障害の女子大学生さんの症状の軽減と精神的なケアのために、ご家族みんなでオンライン・カウンセリングに参加いただいた事例をご紹介します。
高校生のときに発症(初めてのパニック発作)
サユリさんは、真面目で賢い女性です。
第一志望の大学に入学して1年目。
順風満帆だと思われていました。
しかし、夏休みを前にして急に大学にいけなくなってしまいました。
メンタルクリニックを受診。パニック障害と診断されました。
それまでもサユリさんは高校生の頃から何度もパニック発作を起こしていたとのことなのですが、ご両親を心配させないために家では部屋にひきこもるなどして知られないようにしていたそうです。
メンタルクリニックに付き添ったご両親は初めてそのことを知りました。
オンラインでのファミリーセラピー(家族支援)とともに、インフォームド・セラピー(症状や疾患を理解するための時間)を設けることにしました。
セラピーによって家族の混乱を避けることができた
サユリさんのご両親は、家族でセラピーを受けてパニック障害について学んだために混乱せずに済んだとおっしゃいます。
サユリさんのご両親は心のバランスがとれていて心因性の症状には馴染みのない方々でした。
それだけに、ご両親はサユリさんのパニック発作や予期不安による苦しみが最初は理解できなかったとおっしゃいます。
「最初は、トイレへ駆け込んだり息苦しそうにしゃがみこんだりする娘を見てこちらもおかしくなってしまいそうでした。パニック障害状態の娘への接し方がわかってよかった」

ネットにはたくさんのパニック障害についての情報がありますが、ひとりひとり症状や背景は異なります。
ひとりきりの娘であるサユリさんのリアルな声を聞いて、家族でできる範囲・ペースで理解し協力していかれたのが功を奏したと思っています。
生育歴からわかったこと
サユリさんは数回のインフォームド・ファミリー・セラピーののち、生育歴ナラティヴ・セラピーを受けてくださいました。
責任感が強く、小学校時代から学級委員や生徒会の役割を引き受けていたそうです。
大人っぽい子、しっかりした子と見られていたと言います。
「でも、自分のどこかに『とても幼い自分』がいるのをうすうす感じていました。
私より幼いと思われていた周りの同級生はどんどん成長していくのに、私だけ何か足りないと…。
ふとした拍子に子どものように泣き出してしまいそうになる瞬間が増えていきました。
高校のときに初めてパニック発作を起こしたのも、泣くのを我慢していたときでした」

サユリさんのパニック発作は幼い自分ができる唯一の表現なのかもしれませんね
サユリさんは「幼い自分」をどのように扱っていくかをセラピーの中で味わい考えていくことにしました。
生活上では、ご両親に適度に支援をしてもらいながら、毎日の生活を工夫しています。
パニック発作を起こすのを恐れてしたいことを回避しないように、努力なさっています。
image photo:natik_1123によるPixabayからの画像