臨床心理士のミナコです。ご覧いただきありがとうございます。
今回は、パニック障害を抱える主婦の方のパニック症状や予期不安の軽減と精神的なケアおよびQOL(生活の質)改善のために、ご主人にもオンライン・カウンセリングに参加いただいた事例をご紹介します。
結婚を機に?再びパニック症状が…
エミさんは30代女性。結婚前は専門職でバリバリ働いていました。
新卒の頃に何度かパニック発作のような症状が起きたことがありましたが仕事の忙しさで紛れていました。
30歳のとき、友達の紹介で知り合った男性と結婚。
結婚式のあと、職場でも家でも疲労感を抱くようになったエミさん。
もやもやと漠然とした不安感が常につきまとっていました。
通勤や買い物のときに軽いパニック発作が連続して起きたことでどんどん不安が増していったとおっしゃいます。

不安障害の方の症状のひとつに易疲労感があります。
結婚などのライフイベントは環境や心境の変化でストレスに結びつくことも。
休職し、メンタルクリニックで不安障害と診断されました。
抗不安薬のお薬が処方されましたが、不安感が強く外出がしんどいこともあり、オンラインでのカウンセリングを受けてくださることになりました。
高まる予期不安
エミさんは予期不安で思うように身動きが取れなくなってきていました。
「リビングからキッチンに行くのもつらいときがありました。移動するということが怖くてしかたなくないのです」
通勤や買い物のときに発作様症状を起こして以来、外出が怖くなったエミさん。
外出だけでなく家の中での移動もつらくなったとのこと。
オンラインカウンセリングでも、面談中につらくなりうずくまることもありました。
生活を整えつつ症状の意味を考える
オンラインカウンセリングでは、予期不安やパニック発作を起こしても移動や外出をするための生活相談と、生育歴ナラティブセラピーも活用して症状の意味を考えていくセラピータイプの相談を行いました。
外出に関してはご主人の力も借りつつ少しずつ自信をつけていきました。
症状の意味については、生育歴ナラティブ・セラピーにおいてエミさんは環境の変化への脆弱性があるようだと認識されました。
ゆっくりと環境に適応していくほうが心も体も落ち着くタイプのようでした。
結婚や引越はエミさんにとってとてもストレスフルなことだったのかもしれません。
「職場では異動や昇進の話も出ていました。これ以上、変化についていけない…無自覚でしたがそんなふうに感じていたのかもしれません」

「移動」が予期不安の引き金になっていたのも「変化」からの無意識的な防衛だったのかもしれませんね。
エミさんは仕事をお休みすることで心にゆとりがうまれ、ストレスからは解放されていきました。
夫への依存心をどうコントロールするか
しかし、エミさんには新たな心配事が発生しました。
親身にケアし協力してくれるご主人に対する依存心が強くなってしまったのです。
ご主人が仕事のときに家でひとりでいることがつらくなりました。
そのうち、ご主人の仕事時間は寝て夜に起きるという昼夜逆転気味の生活になり、体調が崩れるとまたパニック症状が起こりやすくなる…という悪循環に陥りそうになっていました。
ご主人も「家族の関わり方相談」という形でオンラインカウンセリングを活用してくださいました。
ご主人のキャラクターも鑑みつつ、依存を強めないためにどのようにしていくのが良いかを3人で一緒に考えました。

ご家族全体のQOL(生活の質)改善のために専門家をまじえてご家族みんなで情報共有し焦らず丁寧に考えることが大切です♪
エミさんの個人カウンセリングはご主人への依存に対する無意識的な部分の洞察を深め、かつ昼夜逆転を改善するための生活相談の二本立てで進めていきました。
生育歴からイメージしていっていただくと、
「両親にうまく甘えられなかった経験が関係しているかも…」
とエミさんはおっしゃいます。
共働きで忙しかったご両親に迷惑をかけまいと、体調がわるかったり不安があったりしても口にせずがんばってしまっていたそうです。
エミさんは、
「主人を親代わりにしていたかもしれません。これ以上そんなふうにしていては夫婦とは言えませんね」
と不安そうな表情を見せつつも、
「でも、『世話をしてもらえてうれしい』と初めて感じられました」
そう言って涙を流されました。

症状の悪化や再発、新たな症状の出現は「成長のきっかけ」にすればいいんです♪
セラピーで自然と情緒的に体験していくことが大切です✨
パニック障害を抱えながらの職場復帰に向けて
エミさんはパニックを抱えながら職場復帰するために、ご主人に適度に協力してもらいつつ買い物や通勤の練習をしています。
セラピーではさらなる洞察と生活相談を進めています。